ベストセラーではなく、知る人ぞ知るというような“お薦めの本”(50・60代女性 5,000円)

【選書リスト 吉富副店長より】

この度はご注文まことにありがとうございます。

我々の勤める現代の1フロア型の新刊書店は、いわゆる売れ行きデータというものに厳しく管理されています。

早い話が「売れるものだけ仕入れましょう」ということになりますが、

それだけに「知る人ぞ知る」というのはなかなか難しいテーマとなりました。

今回は、店舗をつぶさに見て回りながら、上記の厳しいデータ管理の網の目をくぐり抜けた本の中で私が個人的に好きな人の本を集めてみました。


①新本:用事のない旅 森まゆみ 産業編集センター ¥1,000

⇒名古屋に来る前は東京の日暮里に住んでいました。そのころ一度だけ会ったことがあるのが森まゆみさん。谷根千を一躍有名にしたタウン誌「谷根千」の編集人として活躍された人で町歩きの達人です。エッセイもたいへん素晴らしく、これはそのエッセンスを凝縮した1冊です。

➁中古:彰義隊 吉村昭 新潮文庫 ¥429

⇒日暮里で生まれたもっとも有名な作家が吉村昭。しかし地味で暗くて正直あまり売れない・・・。司馬遼太郎の対極をいくような作家ですが、これは彼の最後の歴史小説。

➂中古:重蔵始末 講談社文庫 ¥100

⇒吉村昭と同じく開成高校出身の作家が逢坂剛。「百舌」シリーズで知られる人ですが、父親は「鬼平犯科帳」の挿絵で知られる中一弥さんです。そういう縁で鬼平の新シリーズを書くことにもなる彼の、これは最初の時代小説。

④中古:オン・ザ・ロード 樋口明雄 中公文庫 ¥390

⑤中古:史上最強の内閣 室積光 小学館文庫¥191

⇒この二人は私の故郷、山口県岩国市の作家。とはいえ宇野千代や弘兼憲史(課長島耕作の人)ほどにはその名を地元の人にも知られていない人ですので、当然私のご贔屓となります。面白さは保証します。

⑥中古:うらなり 小林信彦 文春文庫 ¥286

⇒小林信彦は私がただただ好きな作家。週刊文春の長寿エッセイあるいは喜劇人の評伝で知られる人ですが、なんと「坊ちゃん」のあのうらなり君を主人公にした小説も書いているんですね。

⑦中古:ぶらり日本史散策 半藤一利 文春文庫 ¥334

⇒この人もまたただただ好きな作家。『日本の一番長い日』を頂点とする昭和史ものの大作の合間に出される小品がまた素晴らしい。こちらはそんな1冊。

⑧中古:取次屋栄三 岡本さとる 祥伝社文庫 ¥100

⇒文庫書下ろし時代小説というジャンルの中で、佐伯泰英や風野真知雄と言った人たちに比べてやや影が薄いかと思われる人ですが本当に面白い。なにしろ「水戸黄門」の脚本を書いていた人ですから。

⑨新本:山のパンセ 串田孫一 ヤマケイ文庫 ¥1100

⇒発行元が山岳ガイドの専門出版社であるという理由で見過ごされがちな傑作。

 つまりたいていは地図ガイドあるいはアウトドアのコーナーに陳列されているわけですね。もったいない話です。

⑩中古:ぐるり埼玉石ものがたり49 関根久夫 幹書房 ¥100

⇒なぜか当店の中古本棚にはわりと埼玉の本が多いのですが、当然ながら動きません。しかしこれは良いです。

ベストセラーを外すとなると、構造上どうしても中古本中心の選書となりましたが、クオリティは保証いたします。気に入っていただければ幸いです。


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